彼女をマリアと呼ぶ日まで

独学ピアノ練習記

7日目 基本あれば憂いなし

 ピアノを始めて1週間が経った。

 今日も大きな古時計。なんとなく感覚は掴めてきたが、いまひとつピンとこない。

 なぜだろう。以前より間違いなく手は慣れてきているし、片手だけならそれなりに演奏できるようになった。

 おれはふと練習の手を止め、ある考えに至った。

 もしや、大きな古時計を覚えているだけだからじゃないか?

 おれは「大きな古時計」を覚えたいんじゃなくて、「ピアノ」を覚えたいんだろう?

 そうだ。おれはピアノに慣れていっているだけで、ピアノを学んでいない。

 いまおれが学ぶべきことは楽譜と鍵盤の互換性だ。

 いままでおれがやっていたことは、「この音符Bは直線C上にある音符Aより二つ上の直線DにあるからAの4つ右の鍵盤(あいだ3つ挟んだ右の4つ目)を弾く」といったその場限りのことで、おれが覚えるべきことは「この直線Bの音符は鍵盤におけるB番目の鍵盤で、次に弾く直線BC間の音符はE番目の鍵盤を弾く」だ。

 それに気づいたおれはなるべくこれまで覚えた感覚を頭から消し、楽譜と鍵盤とに視線を行き来させながら練習を再開した。

 何度も手を止め、鍵盤のどこがドなのか確かめながら楽譜と照らし合わせた。

 そうしているとあっと言う間に1時間が過ぎてしまった。

 想像以上に難しい。しかし、糸口は掴めた。

 これさえ覚えてしまえば、あとはいくらでも新曲に挑めるのだ。(手の慣れはともかくとして)

 言うなればおれはこれまでカスタムロボV2でオラクルヘッドショットガンストレートボムGフロートポッドFロングバーニアレッグを目指していたようなものだ。それだけでは様々な状況に対応できない。

 簡単な話ではないか。あらゆる状況に対応できるようになればいいのだ。

 おれが目指すべきはエイミーグライダーガンクレセントボムPスパイダーポッドGスタビライザーレッグだったのだ。

 なにを言っているのかさっぱりわからないだろうが、唐突にカスタムロボで例えたくなってしまったことをご容赦いただきたい。

 1週間も必死こいていると頭がどうかしてくるものだ。