彼女をマリアと呼ぶ日まで

独学ピアノ練習記

2日目 断崖絶壁

 さて、二日目である。

 初日はあまりに眠すぎて練習内容を記述しなかったが、平たく言うと「ネットで練習法を探し、それっぽく鍵盤を叩いて、どうやら鍵盤を見ないで楽譜を見て初見で弾けるようになればいいということがわかった」であった。

 ところで我が家に迎え入れたキーボードを紹介するのを忘れていた。この子がCTK-6200のエリーちゃんだ。

 

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 見ての通り、おしとやかで笑顔が素敵な61鍵盤だ。やや緊張しているようにも見えるが、それはこちらも同じ。少しずつ打ち解けていきたい。

 

 さて、練習である。

 二日目ともなれば本格的な練習に入りたい。そのためにはテキストが要る。衝動でピアノを買ってからまだ休みは来ていないからそんなもの買いに行ってない。

 しかし幸いなことに、うちにはピアノを弾く者がふたりもいた。

 姉貴は幼少の頃ピアノを学び、そのとき買ったピアノを親父がボケ防止と称して弾いていた。姉貴の本は残っていなくとも、親父のはあるかもしれない。

 そう思いおれは早速親父の本棚を漁った。

 すると、あるわあるわ、なんと6冊も見つかった。

 

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 なにやら難しそうなのもあれば、あからさまに初心者入門風のものもあり、なんと姉貴の教材まで掘り起こされた。ありがたいことこの上ない。

 早速おれは「いますぐ始める お父さんのためのピアノ講座」を楽譜置き板の上で広げ、書かれている通りに鍵盤を叩き始めた。

 なるほどこれは難しい。「まずは指の運動」などと言い、一定の動きを繰り返すだけの楽譜が並んでいるのだが、それを実演するのもおぼつかない。

 こりゃあ先は長いぞ。早く基礎を覚えにゃあ……などと、おれは厳しさを感じつつも愉しみながら指を動かしていた。

 しかしページをめくって目にしたものは、そんなおれのお気楽を吹っ飛ばすに十分なものだった。

 

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 え? 基礎は?

 手の動かし方とか、楽譜と鍵盤の関係性とか、そーゆうのに慣れるコツとかは?

 そもそもこれ、どーやって読むの???

 

「いますぐ始める」にはちょっと高すぎるハードルを前に、おれは全身の血液が冷えていくのを感じた。

 おれの「お父さん」はこれを見てどう思ったのだろう。まさかおれが「お父さん」じゃないから読めないってんじゃないだろうな……