彼女をマリアと呼ぶ日まで

独学ピアノ練習記

11日目 暗記でいいの!?

 今日はどんな練習をしていいかわからなかった。

 というのも、ピアノを弾ける女子大生にページめくりのコツを聞いたところ、なんと曲は覚えるもんだというのだ。

 これはおれには衝撃だった。というのも、ギターコードの弾き語りはコードさえわかれば初見でも弾けるからだ。

 彼女が言うにはピアノのどこを押せばどんな音が出るかわかるのは当然で、知っている曲なら次の音がわかるから楽譜を見なくてもある程度予測でき、ページめくりはそれっぽい任意のタイミングでほいっとめくるそうだ。

 ドラえもんの歌で例えると、

「あんなこっといっいなっ、でっきたっ(次ページに続く)

 らいっいな、あんなゆっめこんなゆっめ——」

 だった場合、でっきたっらいっいな、の途中で手が止められなかったら、でっきたっらいっいなを弾き切って手にわずかな余裕ができてからめくるらしい。

 おれがいま残酷な天使のテーゼと摩訶不思議アドベンチャー、ライオンが愉しいと言ったら、彼女は「どれか一曲を選んで見ないで弾けるようになった方がいい」とアドバイスをくれた。

 うむむむ、これは困った。困ったぞ。

 なにが困ったと言って、飽き性のおれが一曲に集中しなければいけないことほど困ることはない。

 とりあえず今日はエヴァを覚えるつもりで練習を始め、やっぱり飽きて数曲を弾き散らかした。

 ううむむむ、ううむむむむむむ……

 絶望、希望、絶望、希望、からの絶望。

 まあ、絶望と言うほどでもないが、ううむ困った。